自動車は移動や輸送の手段であると同時に、趣味の一面も大きいのは、読者の皆様には周知の事実。これからBEVの時代を迎えるにあたって、「趣味」という面は捨てなければならないのか? 否、その必要はない。なぜなら電動化の時代でもまだまだ楽しいクルマはたくさんあるのだから!
※本稿は2024年6月のものです
文:伊達軍曹/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年7月10日号

■速度と性能についての固定観念を徐々に捨てる

こういったクルマをいつまでも痛快に走らせていたいのがクルマ好きというものだが、それが不可能になる時代が来る可能性も見据えておきたい

 R34GT-RやFD3S RX-7等々の各種国産スポーツカーは、言うまでもなく大変素晴らしい乗り物であり、いつまでも大切に乗り続けたい存在だ。

 だが、もしも2035年頃にいきなり、それら国産スポーツカーに乗り続けることが難しい社会状況になったとしたら、オーナー各位の心身状態はどうなってしまうだろうか?

 おそらくは虚脱状態からうつ状態へと進み、長らく伏せることになるかもしれない。そして最悪の場合には希死念慮に駆られる可能性すらある。だからこそ、ゆっくりと徐々に“解脱”を目指す必要があるのだ。

 最終解脱に向けた具体的なステップは以下に記すとおりだが、端的に言うなら「クルマには高速度と高性能が重要」との固定観念を取り除くことだ。そしてそれらに起因しない類のプレジャーを知る努力を日々重ねていけば、約10年後の最終解脱は充分に可能となる計算だ。

■スイスポ的なクルマに買い替えてとりあえず3年ほど乗ってみるべし

スズキ スイフトスポーツ。どことなくポルシェ911のような乗り味のホットハッチ。スポーツカーから最初に乗り替える先としてはベストに近い

 まずは「速さって、実は絶対に必須なモノでもなかったのだな……」というメンタルに切り替えるため、「あんまり速くないクルマ」に買い替え、それに3年くらい乗ってみる修業に入ろう。

 といっても、シビックタイプRとかに乗っていた人がいきなり普通のフィットあたりに乗り換えると、うつ状態になってしまう危険性もある。

 そのためここは「スイフトスポーツ的なクルマ=充分以上にスポーティな走りが楽しめるが、絶対的な速度はそれほどでもないクルマ」を選ぶことが肝要だ。何事も「急激な無理」は、身体と心によろしくないのである。

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■スイスポではなく「スイフト」的なクルマに乗り換え、さらに3年乗る

スズキ スイフト。軽快な走りのハッチバック。スポーツカーから直接乗り換えると落差に苦しむが、間にスイスポを挟めば大丈夫なはず

 300ps級のスポーツカーから150ps級のスポーティなハッチバックに乗り換えることで身体と心を整えたならば、お次はいよいよ「スイフトなどの、わりと普通なクルマ」へと乗り換え、それに3年ほど乗ってみることにしよう。

 といってもあまりにもダルなクルマだと苦痛に襲われるため、下記の3モデルあたりが適任となるはずだ。

 その際、納車後はJAFが主催している実技講習会「ドライバーズセミナー 一般コース」に愛車で参加してみる。すると、運転という行為の奥深さを追求するためには、必ずしもスポーツカーが必要なわけでもないことが実感できるはず。

■デキのよいHEVまたはBEVに乗り換えてみる

今の時代ハイパワーを出せるのはガソリン車だけではないのだ

 そうこうするうちに2031年。その頃には、今以上にステキな電動車が発売されているはず。もはや「高出力スポーツカー」へのこだわりが薄れたあなたなら、さほど抵抗なくそれに買い替えられるはずだ。

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■さらにデキのよい自動運転系に替える

自動運転と言えばテスラだ。電動車で価格は高いが乗ってみるのもアリなのでは?

 デキのよい電動車を3年ほど楽しんだ頃には、自動運転技術も今とは比べ物にならない水準になっているはず。そして数々の修業を積んだアナタであれば、そんな自動運転車をも普通に受け入れられるだろう。

■クルマ好きを突き進むのはダメなのか?

「解脱しなければいけない」ということは決してない。今現在のスタイルとマインドを継続させるべきか否かは各自の自由だ。とはいえ「今現在のスタイル」を簡単には継続させられない未来がやってくることも、ほぼ確実ではある。

 そうなった時、例えば贅沢税のようなものを納めさえすれば、古典的エンジン車の保有と使用も可能とする措置が同時に取られるだろう。

 そのため「自分はそういった代償を払うぜ!」と心に決めるのであれば、無理に解脱する必要はない。まるで乗馬を楽しむかのように、いつまでも手動エンジン車を楽しめばいいのだ。

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