立ち寄るだけでも楽しい「道の駅」。基本的にマイカー向けの施設ではあるものの、公共交通機関のアクセスだって最低限のサポートはありそう……実際どうなっているのか、全国道の駅の公共交通カバー率を調べてみようと考えてしまった、それはそれは気の遠くなるような話。

文・写真:中山修一
(愛知県の道の駅+路線バスの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■まずは愛知県の「道の駅」事情から

愛知県内にある道の駅の公共交通カバー率はいかほどに!?

 2024年2月現在で、全国には1213カ所(駅)もの道の駅が存在する。さすがに1回ではまとめ切れないため、都道府県別に分けてリサーチすることにした。まずは愛知県の道の駅から見てみよう。

 愛知県には現在のところ、合わせて18駅の道の駅が各所にある。18カ所なら膨大な数でもないので、具体的な名称を以下に記しておくと……

(1)道の駅あかばねロコステーション、(2)道の駅アグリステーションなぐら、(3)道の駅伊良湖クリスタルポルト、(4)道の駅したら、(5)道の駅瀬戸しなの、(6)道の駅立田ふれあいの里

(7)道の駅田原めっくんはうす、(8)道の駅つぐ高原グリーンパーク、(9)道の駅つくで手作り村、(10)道の駅デンパーク安城、(11)道の駅豊根グリーンポート宮嶋、(12)道の駅とよはし

(13)道の駅どんぐりの里いなぶ、(14)道の駅にしお岡ノ山、(15)道の駅藤川宿、(16)道の駅筆柿の里・幸田、(17)道の駅鳳来三河三石、(18)道の駅もっくる新城

……という内訳だ。

■バス・電車ほか公共交通機関のカバー率は?

 これを踏まえて、それぞれの道の駅の近くに電車の駅やバス停・その他公共交通機関の乗り場が置かれているかをマップで確認。

 道の駅施設から実距離で周辺300mまでの範囲を「最寄」に見立てて、それより遠い場所はアクセス手段の対象外とした。結果には上記の道の駅に割り振った数字+最寄の駅やバス停の名称を記してある。さてどうなった!?

道の駅最寄のバス停名には、必ず「道の駅」が付く、というわけでもない

【電車あり】1/18駅 6%
(15)藤川駅

【バスあり】11/18駅 61%
(2)森田橋、(3)伊良湖岬、(4)たない道の駅したら、(7)東赤石、(9)つくで手作り村、(10)デンパーク、(11)宮嶋、(13)どんぐりの湯前、(14)道の駅にしお岡ノ山、(17)柿本城跡[道の駅鳳来三河三石]、(18)もっくる新城[正面]

【公共交通なし】6/18駅 33%
(▲1)、(▲5)、(▲6)、(8)、(▲12)、(16)
※▲付きは、300m以上2.5km以内に電車の駅またはバス停を確認した道の駅。ここでは公共交通なしに含める。

 リサーチの結果、愛知県内の道の駅における公共交通カバー率は大体7割、という実情が出てきた。7割もカバーしているの? なのか、7割しかないの? なのかは判断に悩むところ。

 いずれにせよ、全国道の駅の公共交通カバー率が100%ではないのが、最初の時点で確定した。

■1カ所選んで行ってみる

 ただ調べて終わらせるのは勿体無い。リサーチ対象にした都道府県の道の駅に、1箇所くらいは公共交通機関で訪問してみたい……そう思って愛知県にある道の駅から1つ選んで、行ってみることにした。

 今回選んだのは(3)道の駅伊良湖クリスタルポルト。後日お土産を知り合いに手渡したら、伊良湖(いらご)と書かれたパッケージを見て「どこの湖に行ったの?」と聞かれてしまった、湖と付くけれど湖はない、愛知県渥美半島の突端だ。この道の駅へは路線バスがカバーしており、「伊良湖岬」が最寄の停留所になるらしい。

豊橋駅を起点に、伊良湖の道の駅へ行ってみる

 観光客が愛知県内から向かおうとするなら、豊橋駅が手軽な起点になるでしょう、と思い確認してみると、豊橋駅前から豊鉄バス「伊良湖本線」に乗り、途中で乗り換えを1回挟むと、バスだけで伊良湖の道の駅にアクセスできるそうだ。

 そのほか、並行して通っている豊橋鉄道渥美線で、電車の終点にあたる三河田原駅まで向かい、田原駅前バス停から豊鉄バスの伊良湖本線に乗り換える方法もあった。

 豊橋駅前始発の伊良湖本線は全便が途中の「保美(ほび)」バス停止まりになっているが、田原駅からだと保美より先、今回の目的地にあたる「伊良湖岬」まで行く便がある。

■三菱勢で固めたローカル路線バス

 当日は新豊橋→(電車)→三河田原→(バス)→伊良湖岬のルートを選択。豊鉄バス伊良湖本線の本数は1〜2時間に1本くらいと決して多くないため、ある程度時間を狙って行く必要はあった。

三河田原駅前のバス停に伊良湖岬行きがやってきた

 豊鉄バスの伊良湖本線は、一般的な大型路線車で運行していた。利用した車両をはじめ、乗車中にすれ違ったバスの車種を観察していると、どうも伊良湖本線を受け持つ営業所では、三菱ふそうエアロスターをスタメンに据えているとみた。

 時刻表通りなら、田原駅〜伊良湖岬間を約57分で走る。距離にすると28kmあり、さすが半島の端まで行くだけあって結構遠い。進行方向右側に海がちょこちょこ顔を出しつつ、圧迫感のない、ゆったりした景色の中を進んでいく感じだ。

■道の駅はどこに?

 28kmも走るとなればバスの運賃もそれなりの4ケタ台・1,120円(田原駅前〜伊良湖岬を通しで乗った場合)になる。電車と伊良湖本線を乗り継ぐと、運賃が80円引きになる割引制度があるので、利用するとちょっとお得。

 伊良湖岬にバスを降り、さて道の駅はどこに? と見回す間もなく施設が見つかった、バス停の目の前だ。バス停名に「道の駅」と言うキーワードは含まれていないものの、伊良湖は公共交通アクセス抜群の道の駅だった。

道の駅伊良湖クリスタルポルトの前までバスが入る

 さらに、道の駅伊良湖クリスタルポルトは、三重県の鳥羽を結ぶ伊勢湾フェリーのターミナルビルの中に入っており、フェリーターミナル併設型の道の駅というのも全国的には結構珍しいかもしれない。

 ここからフェリーに乗って行きたかったものの、別の用事があったので、この日は諦めて折り返しのバスに乗車。10:27に着いて、帰りのバスが出るのは11:05。

 お土産を物色する余裕も十分作れて、ちょうどよい滞在時間になった。もしそれで足りなければ、さらに1時間後の12:05発が狙える。

 道の駅伊良湖クリスタルポルトは、バスのダイヤ的に見ても、多くはないが困るほど本数が少ないわけでもないため、割と簡単に行ける道の駅と言えそう。次はどこの道の駅へ行ってみるかな……バスで。

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