前編では純正セキュリティに防犯上の穴があることをお伝えした。そのため愛車を防衛する上で必要になるのがアフターのセキュリティシステムだ。そこで後編の今回はその選び方やセキュリティシステムを構築する考え方などについて紹介していくこととした。

◆無駄なものを組み込むからこそ高くなる、最適化したシステム構築が必須!

純正セキュリティがスマートキーの複製などで比較的容易に破られてしまうことを前編ではお伝えした。しかも市場には窃盗犯が用いるさまざまな機器やマスターキー等が“車両整備機器”として販売され、誰もが手軽に手に入れられる状況になっている。そんな危険な環境に愛車を置くことになるため防犯上、是非とも欲しいのがアフターで構築する強固なセキュリティシステムだ。

しかし、システムの性格上細かく説明することができないため、各ユニットのことを詳しく知ることが難しい一面もあるのは事実。そこで今回はポイントを絞って、どのようにセキュリティシステムを選べば良いのかをナビゲートしていくこととした。

システムの説明をお願いしたのはサウンドステーション クァンタム代表の土屋氏。自社にセキュリティを組みに来るユーザーに対して常日頃している説明をベースに、自分にぴったりのセキュリティシステムをムダ無く効果的に、なおかつわかりやすく組み立てられる流れを作ってもらった。

「最初に考えて欲しいのは、何からどのように愛車を守りたいか? です。車両盗難なのか車上荒らしなのか、その両方なのか。またクルマに触れられるのも嫌なのか、最悪の場合クルマが残っていれば良いのか、です。ここを明確にすることがセキュリティシステムを組み立てる出発点になります」

ヘビーなシステムを組んで防御力を高めるのか、適材適所のシステムで特定のセキュリティの穴を補うのか、そんなセレクトにはまず自分自身が愛車の防衛に対してどのような思い(守備範囲とも言えるもの)を持っているかを確認しておきたい。そんな大前提を語ってくれた土屋氏だったが、セキュリティを組むユーザーに最初に知っておいて欲しい事柄があるという。

「そもそもセキュリティは万能ではないことをまずは知っておいて欲しいです。セキュリティが果たす防犯上の役割はイメージではせいぜい30%程度です。その他は自分で気をつける管理能力が30%、さらに駐車環境が30%と考えてください。残りの10%は運です。セキュリティを取り付ければすべてが解決すると考えるのは“過信”です。セキュリティに頼り切りになるのではなく、自分でも考えて窃盗被害に遭いにくい工夫をしてくださいとすべてのユーザーに伝えています」

◆使う人や環境によって選び方が変わってくるのがアフターセキュリティ

そんな心構えを教示されたところ、いよいよセキュリティのチョイス方法の説明がスタート。しかし最初に説明されたのはちょっと意外な項目だった。

「家族の誰と誰が運転するのかも重要です。オーナーだけが乗るのであれば少し複雑なシステムでも操作は可能でしょう。しかし家族がセキュリティシステムに知識がないと使いにくくなってしまいます。また大きなポイントになるのが誤動作です。例えばショッピングセンターの駐車場などに停めておいて窃盗犯ではない通行人が通りかかるなどして誤動作による発報でサイレンが鳴ってしまうケースなどです。これが頻繁に起こると誤動作を嫌ってセキュリティをオフにする時間が出てきます。これではセキュリティの意味が無くなってしまうのです。誤動作しにくさが求められるのはそのためです」

最上級のセキュリティシステム“パンテーラ”は特にMT車にオススメ

そこで土屋さんが注目しているセキュリティシステムが『ゴルゴ』と『パンテーラ』だ。これらのセキュリティシステムにはアルゴリズムプログラミングと呼ばれる、2つのセンサーが同時に反応しなければ発報しないという設定が可能なのが特徴。そのため不意にサイレンが鳴ってしまうことも防げる。

例えばのぞき込みに反応するセンサーだけだと横を通り過ぎる車両などにも反応するが、熱源を検知するセンサーと合わせて使うことで、両方が反応してはじめて発報するシステムを構築できるのだ。そのためより精度の高い発報が可能になり誤動作は少なくなる。これらのきめ細かな設定やセンサー類の組み合わせが可能なのがゴルゴとパンテーラだという。

次にアフターのセキュリティシステムとしての根本的な性能についてもうかがった。

「純正キーだけではエンジンが掛からないようになるのがアフターセキュリティシステムの大きな特徴です。解錠からエンジン始動までの操作にはセキュリティのリモコンと純正スマートキーが必要になり、これを別々に機能させることで防犯性能を高めているのです。純正のイモビライザーに加えて、セキュリティシステムのイモビライザーが別に機能しているので純正キーの複製などでは破られることはなく防犯的にも強固になるのです」

誤作動の少なく高いセキュリティ性能を持つ“ゴルゴ”

エンジンを始動できなくする機能であるイモビライザーについては前編でもお伝えした。近年は純正イモビライザーを備えている車両が多いが、さらにアフターのセキュリティもイモビライザーを備える。先に紹介したゴルゴにもイモビライザーが装備され純正のイモビライザーに加えてより強固なセキュリティ効果を持つのだ。

さらにパンテーラには2ポイントイモビライザーと呼ばれる2つのイモビライザーが搭載されているのが特徴。2つのイモビライザーであればクランキングとイグニッションをそれぞれ制御し、イモビライザーによる照合がなされないとセルも回らず、点火もしないという状況を作ることができる。2つのイモビライザーを用いたシステムにはいくつかのメリットがあるが、その一例が1つのイモビライザーでセルを制御するとMT(マニュアル)車の場合は押し掛けすればエンジンが掛かる状態になってしまう事例だ。そのためMT車にはセルとイグニッションを制御できる2ポイントイモビライザーを用いることがほぼ必須となるのがわかるだろう。

セキュリティの基本機能となるイモビライザーについてセレクトが済んだら、次に取りかかるのがセンサー類のチョイスだ。これがユーザーごとの使用環境で組み合わせが異なる重要なポイント。先にも紹介した誤動作への対策なども含めて、組み合わせ次第で使い勝手や防衛能力が変わってくる。オーダーメイドのセキュリティシステムを作り上げるには要注目だ。

センサー類のセレクトはショップのスタッフのリサーチでユーザーがどのような環境で運転、駐車しているのかを解き明かしていくことから始まる。こんなケースにはこのセンサーを用いることが効果的、などはスタッフの長年の経験からひとつひとつ判断されていく。だからこそショップに出向いて詳細な打ち合わせをし、オーダーメイドで自分に合ったセキュリティシステムを構築していくのが大切なのだ。

逆を言えば機械式や平置き、駐車場が敷地内か敷地外かなど環境に左右される物なので、ユーザーの事を何も聞かずに勧めてくる事がもしあれば、それはショップ側の押し売りとなってユーザーの求めているセキュリティ性能を発揮していない危険もあるかも知れない。車種別パッケージで販売されている事もあるのだが、それは車両に対して最適化されているわけで、ユーザーの使用環境は考慮されていない場合がほとんどとなる。あくまでベースとして考えて環境に合わせたシステムを構築することが大切だ。

◆目的と使用環境を明確に出来れば搭載するセンサー類が自ずと決まってくる

いくつか代表的なセンサー類を紹介しておこう。まずはマイクロ波センサー、これはクルマをのぞき込むなど、元々なかった物体がクルマに近づくことで反応するセンサーだ。

IRセンサーは熱源を検知するセンサー。人間の熱にも反応する。マイクロ波センサーと組み合わせて用いるケースも多い。

トリプルセンサーは車内の空気の揺れを検知するセンサー。その他ショックセンサー傾斜センサーなど、ポピュラーなセンサー類も数多く用意されている。

先に紹介した2つのセンサー類を組み合わせて用いるアルゴリズムプログラムを使うことで、誤動作を最小限に抑えた上で発報したいタイミングを計算して複数のセンサーを設置できる(ゴルゴやパンテーラの特徴)。そんなアドバイスやシステム構築ができるのもセキュリティシステムを知り尽くしたショップのスタッフだからこそなのだ。

また既存のドライブレコーダーとの連携機能も備える。セキュリティが警告を発した段階でドライブレコーダーを起動させて録画することも可能だ(起動時間はドライブレコーダー側に依存する)。

さらに使い勝手の上ではリモコンも重要。アンサーバックと呼ばれる車両側からの通知が受けられる2ウェイリモコンであれば、クルマから離れていても愛車で何が起こっているかがわかる仕組み。

ところで、セキュリティシステムはここまで話のあったゴルゴやパンテーラ以外にもたくさんのモデルがある。例えば近年注目が集まる『IGLA』(イグラ)もそのひとつだろう。

「CANインベーダーなどデジタル通信上の不正対策を行うことができるのがイグラです。アナログでのセキュリティ制御ではないモデルなのが特徴です。システムの特徴や役割をしっかり説明して上でユーザーに選んでもらっています」

このように大きく目的の異なるシステムもあるので、ショップのスタッフと自分の用途や環境などを伝えて、最適なシステム、取り付けを実施するのがムダがなく、効果的なシステム構築となるだろう。

こうしてセキュリティシステムを選び、必要なセンサー類を組み込んだら取り付けとなる。しかしセキュリティの取り付けは非常に大切なポイント。まずは機器や配線の在処を特定されにくいこと、複雑な配線を施すことで簡単には破られないことなど、通常の電気配線とは異なる高度な技術が必要になるのだ。詳細は明かせないもののここがレベルの高い専門店ならではの魅力となる。

「取り付けが簡単=解除も簡単になってしまいます。その点でゴルゴやパンテーラは複雑で難しい取り付けになることも長所でしょう。当店で取り付けたクルマが、数年して乗り換えることになりセキュティの取り外しを依頼されたことがありました。その時には取り付けた私でさえ、すべてのセキュリティシステムを取り外すのは非常に大変でした。こんな事例からもセキュリティの取り付けの複雑さがわかってもらえるのではないでしょうか?」

最後に気になる費用の面だが、サウンドステーション クァンタムではホームページに施工費込みの価格を表示しているのでわかりやすい。例えば話の上がったパンテーラの最上級モデルである「Panthera Z706」はさまざまなセンサー類などがセットされて施工技術料込 34万98000円~。対して基本的なセンサー類のみでその他は必要なオプションで追加していく方向性のモデルである「Panthera Z106」は施工技術料込 20万6800円~となる。またゴルゴのベーシックモデルとなる「Grgo ZVll」は施工技術料込 16万2800円~となっている。紹介した通り必要な装備、センサーなどを精査した上で、最適なモデルを選ぶと良いだろう。

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