タイヤ交換は数年に一度の大きめな出費。「その寿命はスリップサインを見れば……」というのはなんとなく知っているけど、そこのチェックだけでいいのだろうか? そこで、いまさらながらタイヤ交換の時期について。
文/山口卓也、写真/写真AC、イラストAC
■夏タイヤの交換時期はスリップサインで見るのが正しい?
タイヤショルダー(肩)をよく見ると、△マークが見える。このマークの先にあるのが「スリップサイン」と呼ばれるタイヤの寿命を見極めるためのミゾ内の突起。タイヤの残りミゾが1.6mmになるとこのスリップサインとミゾがつながり、前後方向のミゾが途切れてしまう。
このスリップサインが1箇所でも出ているタイヤを装着していると車検不合格となり、道路交通法で使用が禁止されている。これに違反すると制動装置等の整備不良で違反点数2点+普通車6000円の反則金が科される。
■残りミゾ4mmを境に大幅性能ダウン!
ただし、このスリップサインは“使用限界”を知らせるものであり、残りミゾが4mmになると「タイヤと路面の間から水を除去する排水能力」「駆動力・制動力」「操縦安定性・タイヤの放熱性」が大幅に低下する。
ちなみに、新品時のタイヤのミゾはメーカーによっても異なるが約8mm。ミゾが半分にまでなると、特に雨天時の高速走行ではタイヤの排水性能が低下し、タイヤと路面の間に水があることでブレーキやハンドルがきかない“ハイドロプレーニング現象”が起きやすくなる。
また、濡れた路面での時速80kmからの“タイヤメーカーが行った制動距離テスト”では、残りミゾ4mmを境に大幅に制動距離が延びたという結果も。よって、スリップサイン(残りミゾ1.6mm)は使用限界、残りミゾ4mmが交換を考えたい時期と考えておきたい。
■タイヤには油分が重要!
「油分なんてあったら滑るじゃん!」と思われるかもしれないが、柔軟性を保つために油分は重要。
ミゾが多く残っていても、製造後10年も経過したタイヤのゴムに含まれる油分はかなり抜けており、柔軟性が失われたカチカチ状態。ミゾがまだまだ残っていても、タイヤメーカーの狙った性能は当然出せないため、製造後10年経ったタイヤは交換することをお薦めする。
■スタッドレスタイヤの交換時期はどこで見る?
冬に履くスタッドレスタイヤにも、残りミゾ1.6mmを知らせるスリップサインはある。だがこれは先にも言ったように“使用限界”。
スタッドレスタイヤには夏タイヤにはない“プラットフォーム”と呼ばれるものがある。これは50%の摩耗を知らせるミゾ内の突起で、タイヤショルダーの↑マークのある先に、タイヤ1本につき90°間隔で4箇所設けられている。
ちなみに、新品時のスタッドレスタイヤのミゾはメーカーによっても異なるが、約10mm。スタッドレスタイヤの場合、新品時から50%摩耗(残りミゾ5mm)を過ぎると大幅に氷雪路でのグリップ力が低下するといわれている。
スタッドレスタイヤのトレッド面(路面と接する面)には、夏タイヤにはない細かな切れ込み(サイプ)が設けられていて、このサイプによって雪が溶けた水を排出し、雪や氷に覆われた路面でグリップさせている。
摩耗が進むと当然このサイプも浅くなり、除水効果・グリップ力は摩耗50%時から大幅に低下する。
つまり、夏タイヤもスタッドレスタイヤも、新品時から50%摩耗した時が交換を考えるべきタイミングといえるのだ。
■100円玉で残りミゾをチェックする方法
とはいえ、「残りミゾのチェックはどうすればいいの?」と思うだろう。そこで100円玉を使ったチェック法を。
“100”の文字がタイヤのトレッド面に垂直になるようにミゾに差し込み、100の“1”が見えたら残りミゾは約5mm。
“1”が見えたら、夏タイヤであれば「もう少しは使える」、スタッドレスタイヤであれば「そろそろ交換」と判断したい。
■タイヤを長持ちさせるには?
タイヤの寿命を知る&交換スパンを延ばすには以下のことをアタマに入れておきたい。
1.日常点検+月に一度の空気圧点検
2.ローテーションとアライメント調整
3.保管方法
1.日常点検+月に一度の空気圧点検
乗る前にタイヤをチラリと見るクセをつけておくと、少なくなっている空気圧や偏摩耗、異物の噛み込みやヒビなどに早期に気づくことができる。タイヤは、ゴムの分子の隙間から酸素が通り抜けることで徐々に空気は抜けるもの。月に一度は空気圧点検を忘れずに!
2.ローテーションとアライメント調整
タイヤは装着位置(前後左右)によって摩耗具合に差が出るので、定期的にローテーション(位置替え)したい。クルマの駆動方式や回転方向指定の有無などでローテーション方法は変わるため、5000km程度を目安にプロショップやカー用品店などでローテーションを行いたい。
また、アライメント調整(タイヤの取り付け角度のズレ・バランス修正)も重要。特にローダウンやリフトアップしているクルマでは、多くがアライメント調整されておらず、タイヤの偏摩耗も多いのでここはこだわりたい。
3.保管方法
夏にはスタッドレスを、冬には夏タイヤを保管することになる。保管時は直射日光を避け、雨や油、熱の影響を受けない場所へ。
タイヤホイールで保管する場合は横にして保管、どうしても立てて保管する場合は接地面を月に一度は変更し、タイヤの変形を防ぎたい。
■安いタイヤ、アジアンタイヤってどうなのか?
「安いタイヤ」と言われてアタマに浮かぶのが“アジアンタイヤ”と呼ばれる日本以外のアジア諸国メーカーのタイヤ。
ハンコックやマキシス、クムホ……などは、少しクルマに詳しい人なら知っているアジアンタイヤブランドだが、なかには聞いたこともないようなブランドの超格安なアジアンタイヤも見かける。
高価な有名ブランドのタイヤを履いているがために「金銭的理由でタイヤをなかなか交換できない……」くらいなら、“安価かつ、ある程度信頼のおけるアジアンタイヤ”に交換するというのはアリ。
いまやアジアンタイヤであってもクルマメーカーに純正採用されているブランドもあり、前出の3ブランドは国内クルマメーカーや欧州クルマメーカーなどにも多く純正採用されている。
「アジアンタイヤは安かろう悪かろう」な時代も過去には確かにあったが、現在では低価格&高品質なブランドだってある。
「純正採用されているかどうか?」は、アジアンタイヤ選択時のひとつの目安として考えてもいいが、アジアンタイヤについての詳細は下記の記事も参考にしてほしい。
純正装着タイヤならOK? 大注目「格安アジアンタイヤ」厳しい現実と注意点
今回はタイヤについて書いたが、タイヤは路面との最初の接点を担う重要パーツでもある。サイズやブランドにこだわる人は多いが、偏摩耗や寿命を過ぎているタイヤを見ると残念に思う。サイズやブランド以外にもしっかりと目を向けてほしい!
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