ラジエターキャップのチューニングは昔から行われている冷却系チューン。クルマの冷却系はラジエターキャップのスプリングによって加圧されている。

◆ラジエーターとキャップの役割ってなに?

水は100度で沸騰するところを加圧することで沸点を上げているのだ。そうすることで水温が100度以上になっても沸騰せずにエンジンを冷却することができる。沸騰してしまうと気泡が発生してエンジンを冷却できなくなってしまうのだ。

そこで加圧する力を高めたのが強化ラジエターキャップ。純正では0.9kg/cm2程度の加圧を1.1kg/cm2などにすることによって、沸点を高めている。ラジエターキャップを強化することで冷却性能がアップするわけではない。水温が高くなった時に沸騰を防げるというだけなのだ。

もともとワンメイクレースでどうしても冷却水が沸騰してしまい、オーバーヒートする車両があとを絶たなかった。そこで強化ラジエターキャップが作られるようになり、連続周回をしても沸騰することなく、エンジンを冷やし続けることができるようになったのだ。

◆強化ラジエーターキャップ装着で何が変わるのか?

そういったパーツなので夏場の暑さに備えてラジエターキャップを強化しても水温が下がるわけでもない。しかし、もし水温が高くなったときには沸騰を防ぐ保険としては一定の効果は期待できるのだ。

そのときに気をつけたいのがクルマ側の負荷。圧力が高くなるとあらゆるところに負荷が掛かる。ラジエターホースはとくに膨張しやすく、膨らんだり接続部から漏れたりもしやすい。

なので、ラジエターキャップを強化品にしたら、ラジエターホースの状態もよく確認しておきたい。ラジエターキャップを強化にしたことで冷却水が漏れてくることもありえるのだ。

そういったパーツなので、強化ラジエターキャップは、夏場にサーキットを連続周回する予定があるのでなければ正直不要なパーツ。それよりラジエターキャップをしっかりとメンテナンスとして交換してもらいたい。

ラジエターキャップが加圧している部分はゴムによってシールして密閉性を保っている。このシールが劣化してしまうと加圧できなくなり、100度で沸騰するようになってしまう。

こうなるとシリンダー内部のもっとも温度が高くなる部分で冷却水が沸騰してしまう。水は沸騰する時に膨張し、シリンダー壁にダメージを与えてしまう。長らくシリンダーにダメージを与えて、蓄積してしまうのだ。

エンジンを長く持たせるためにわずか数千円でエンジンを壊すリスクを下げられるので、ぜひとも交換しておいてもらいたい。とくにサーキット走行をさせるような場合は車検ごとくらいのペースで交換しておこう。

◆他にもメンテしておきたい部分はここだ

冷却系のメンテナンスをするならあとはサーモスタット。冷却水の温度が上がればサーモスタットが開いてラジエターに冷却水が流れ込む。温度が低いうちはラジエターに冷却水は流れずに循環する。

このサーモスタットが開く温度を下げるのがローテンプサーモスタットというパーツ。通常であれば80度くらいからサーモスタットが開くところを、65度などの低めの温度から冷却水をラジエターに流すことで水温上昇を防ごうという狙いがある。

水温が100度を超えような温度になるまでの時間を伸ばすことができるので、サーキット走行時に水温が高くなりすぎてしまうクルマには有効。数周で水温110度になってしまっていたのが、5~6周は可能になった、というような効果を持つ。

だが、たとえば65度でサーモスタットが開く設定だと冬場に街乗りをすると65度付近で水温が安定してしまう。そうなると暖房は効かないし、エンジンは水温を上げようと燃料を濃く補正がされるので燃費が悪くなるなど弊害が起きる。

なので、ローテンプサーモスタットも使い方が重要。夏場にサーキット走行するなら有効だが、街乗りもするならサーモスタットが開く温度が高めのサーモスタットを使うなどの配慮が必要。車種によっては若干サーモスタットが開く温度の低い他車種の純正サーモスタットを流用するなどの手もあるのだ。

水温にまつわるチューニングはいずれも大は小を兼ねることがない。街乗りをするなら適温が重要で、水温が低ければよいわけではないので、最適な温度になるようにコントロールしておきたい。

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