覚えているだろうか。2021年7月にレクサス高輪で不正車検が行われていたことが発覚、以降トヨタ販売店で、次々と同様の事態が発生したこと。あれから間もなく3年の月日が流れる。課題が山積していたあの時、改善をリードし継続できる人材の育成へ早急に取り組むとしていたトヨタだが、現場の整備士の待遇は変わったのだろうか。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部
■目に見える残業は減った! しかし課題はまだまだ山積み!?
当時、特に問題になったのが、整備士の働く環境についてだ。サービス残業の常態化が進み、「働けど働けど、我が暮らし楽にならず」の状態が続いていた。
人員不足や現場の実態を把握していない管理不足も指摘されたわけだが、今はどうなっているのだろう。
複数のディーラー整備士に、今の状況を聞き取りしてみると、「残業時間の長さについては、一時期よりも大きく改善された」という答えが数多く返ってきた。
労務時間管理も機能しており、サービス残業も減っているという。
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■整備士だけじゃない! 聞こえてくる嘆きの声…..
では、サービスエンジニアの人員はどうだろう。こちらも「少し増えた」という答えが多かったものの、「あまり変わらない」という声も目立つ。
中には、「新入社員の採用は増えたように感じるが、戦力になるのはまだまだ先の話。自分たちの仕事が楽になるほど、実労働力は増えていない」という声や、「人が増えてもピットが増えなければ捌ける台数は変わらない」といった、ハード面の課題を指摘する声もある。
こうした声も、筆者が聞き取りをした範囲での話であり、目に見えないところでは昔も今も環境が変わってないと嘆く人がいるかもしれない。
そして、不正車検問題が明るみに出た3年前も今も、変わらずに整備士の間で問題視されている現象があった。
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■足りない足りない! 時間が全然足りない!
今も昔も、根強く残る問題は、整備士の仕事がパンク寸前まで詰め込まれるという状況だ。朝から晩まで、分刻みで入庫予定が組まれ、1つの作業遅れが命取りになる状況には、あまり変化は見られないという。
そればかりか、残業が少なくなった分、昼間の作業の詰め込み方が、以前にも増してひどいという声もある。
不正車検が行われた一つの要因として、「時間が無かった」「省かなければ次の作業に支障が出る」といった理由が現場からは挙がっていたはず。
しかしながら、今でも同じ状況が続いているようだ。この点が改善されないことには、問題の根本的な解決とは言えない。
3年かけてもまだこの状態なのは、非常に残念であり、問題の根本原因にメスを入れないメーカーおよびディーラーの上層部には、猛省を促すとともに、問題解決を急ぐように願う。
もう絶対に、あのような事態を起こしてはならないのだから。
また、残業が少なくなったという声と共に、収入も減ったという声が圧倒的に多かった。整備士の処遇改善にも速やかに動いてほしい。
基本給の底上げが軸にはなるものの、販売店報奨金の分配方法の見直しや、整備士への正統な評価が行われるだけで、多少なりとも改善できる。
労働環境の整備と共に、金銭的な処遇改善も行われなければ、整備士になる人の減少傾向にも歯止めはかからない。
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■ソフト・ハードともに、改善へ動くディーラーも
ここまで厳しい話を連ねてきたが、環境改善へ大きく動いたディーラーもある。3年の間に、時間とお金をかけて、働きやすい環境を作り上げてきた。
中でも最も大きな効果を上げている方法が、店舗やピットの改築だ。ハード面の改修が行われ、ピットが広く大きくなり作業性が上がった。
また、ピットの建て方を工夫して、冷暖房設備がしっかりと整った工場を作り上げている。
暑さ・寒さが和らぐだけでも、サービスエンジニアの作業効率は大きく高まる。効率が上がった分だけ、多くのクルマを診ることができミスも減るだろう。改築後は、サービス売り上げが以前より良くなったようだ。
賃金面でも、評価テーブルや賃金テーブルの見直しを行い、評価をする側も受ける側も、双方に妥当性が感じられるものへ、変化している最中というディーラーもいくつかあった。
問題の原因を正しく突き止め、真正面から取り組み、解決に対して逃げない姿勢は、多くの自動車ディーラーに見習ってほしいものだ。
整備士の待遇改善は、まだまだ道半ばであることが、今回の取材でよくわかった。この問題から逃げることは許されない。引き続き、現場で何が起きているのかを注視し、完全なる問題解決まで、整備士の未来をしっかりと追い続けていく。
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