2024年6月28日、トヨタ自動車は株主総会を開会した。SNSでは豊田会長への「モータースポーツは道楽じゃないのか」という質問が話題になっている。しかし豊田会長がどのようにその質問に答えたのかはなかなか見えてこない。ベストカーWebでは当日の様子をお届けしたい。

文:ベストカーWeb編集部/写真:TOYOTA

■「認証不正報道でショックを受けた。内部統制が効いていない」

豊田会長が社長に就任してから大幅にトヨタ車は変わった

 トヨタ自動車の株主総会。タイミングからしても株主からは認証不正報道の質問も多くあり、佐藤恒治社長を筆頭にお詫びと経緯説明をするシーンもあった。

 ただやはり株主総会としてはその4兆円超の業績に触れるシーンも多くあり、さらにマルチパスウェイ戦略など多岐にわたった。そのなかで多くのクルマ好きが「えぇっ?」となる株主からの質問があった。

「認証不正報道でショックを受けて。内部統制が効いていなかったり、ガバナンス不全ではないか。背景にあるのは、モータースポーツはじめ様々な取り組みに時間を使い過ぎではないか。モータースポーツの取り組みが会長の道楽になっているのではないか」。

 トヨタはWEC、WRCというふたつの世界選手権への参戦、国内ではスーパーGTやスーパーフォーミュラなど国産メーカーとしてはとてつもないカテゴリーへの参戦を果たしている。

 豊田会長自身もスーパー耐久などにドライバーとして参戦しているし(※厳密にはモリゾウ名義でルーキーレーシングからの参戦)、きっと株主から見ればその様子が楽しんで遊んでいるようにしか見えないのだろう。

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■「それを院政というのであれば、院政をやる」

豊田会長は自らハンドルを握り水素エンジンで競技をする

 自動車メディアからすればトヨタのクルマは豊田会長が社長に就任した当初からかなり変わった。GR86、GRヤリスなどスポーツカーばかり取り沙汰されるのだが、実際にはカローラひとつとってもとんでもない進化を遂げた。

 しっかりとした足回りでありながらしっかりと伸び縮みするダンパーなど、これは走りが分かる責任者がいなければ成り立たない。その人物こそがマスタードライバーである豊田会長だったわけで、そのセンサーを磨き上げるために始まったモータースポーツ参戦が道楽と言われるのはちょっと気の毒にも思える……。

 豊田会長は株主からの質問に対し2010年のリコール問題から過去、現在、未来まで責任を負うことを決めてきたと発言し、ガバナンスが効いていないという質問にこう返している。

「私が考えるガバナンスは、支配や管理ではなく、1人1人が自ら考え、動ける現場をつくることだと思う。私の存在や行動によって、院政や道楽と言われてしまう。院政を調べると、昔、後三条天皇が摂関政治から脱却するために、早く引退して政治を行う事がきっかけになったとある。

院政とは老害というネガティブなイメージはあるが、本来の意味は、新しい時代を切り拓くもの。執
行メンバーに言っているのは、責任を取るのは私、決めて進めるのは執行メンバー。いつでも相談に乗ると言っている。

私が執行メンバーが決めたことを後から修正したりすることはない。私は前工程として、相談に乗ることにより、私の失敗体験を糧にし、若い執行メンバーに思い切ってチャレンジしてもらいたい。それを院政というのであれば、院政をやる」。

 モータースポーツが道楽と言われようが、それが会社の実益にかなっているのであれば豊田会長は今後も続けていくことになるだろう。まして今やカーボンニュートラルを求められる時代。

 ハイブリッド、BEVなどさまざまなパワーソースでの競技がおこなれているが、水素エンジンでモータースポーツを戦っている自動車メーカーは世界を探せどトヨタだけだ。さらにそのドライバーのひとりがトヨタの会長というのだから、それを「道楽」って言葉で括るのはちょいと寂しいじゃないか。

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