長い下り坂を走行中、突然ブレーキが利かなくなってしまったり、大雨のなかを走行中にクルマが流されてしまって水没してしまったなど、クルマで走行中にトラブルに遭遇することはあります。クルマで走行中の場合は、(同乗者がいなければ)基本的にドライバーひとりで対応しなければならず、場合によっては、そのトラブルへの対応方法を知っているかいないかが生死を分ける場合も。「もしも」の時に備えて知っておきたい&試しておきたい機能をいくつかご紹介しましょう。

文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_Spica/写真:Adobe Stock、写真AC、エムスリープロダクション

脱出用ハンマーはガラスと垂直に、シートベルトは斜めに切る!!

 水中に入ってしまった場合でも、(状況や車種にもよりますが)クルマは、数分間は浮いていることができるので、その間に脱出するよう、落ち着いて行動することが大切です。まずはシートベルトを外し、サイドガラスを開けてください。パワーウインドウでも、水没直後であれば開く可能性が高いですので、とにかくやってみてください。開けば、そこから脱出します。JAFによると、外を見るのではなく、車内側を向いて、背中側から外に出ると脱出しやすいそう。

 パワーウインドウが開かない場合は、サイドガラスもしくはリアガラスを、脱出用ハンマーなどで割って脱出します。脱出用ハンマーには、金づちタイプやピックタイプ、ポンチタイプがありますが、いずれもガラスを割る際は、ガラスと垂直になるようにハンマーを当てるようにすると、割れやすいです。窓が開かず脱出用ハンマーもない場合、身近なものでガラスを割ろうとするところですが、傘やヘッドレストの棒などで窓を割ることは、ほぼ不可能だと考えてください。応力が集中する脱出用ハンマーでないと、サイドガラスを割ることは難しいです。

 この場合は、落ち着いて、クルマの中と外で水位が同じになって、水圧の影響が小さくなるのを待ちます。水位が同じになってきたら、ドアロックを解除して、足でドアを蹴るなどで勢いよくドアを開けることで、脱出することができます。それでも開かなかった場合は、さらに車内に水が充満するまで待ち、水が首のあたりまで来たとき、先ほどと同様に足でドアを蹴るなどで勢いよくドアを開け、脱出します。ドアロックは車内からあれば水没していても解除することができるので、安心してください。

 シートベルトが外れなかった場合、シートベルトカッターで切断することになりますが、3点式シートベルトの場合は、刃を立てた状態で、腰の部分のベルトを斜めに切ると早く切ることができます。このとき、ベルトをバックル側に引っ張った状態で切ると、切断しやすいです。シートベルトカッターは、脱出用ハンマーに付属していることが多いので、万が一の時のため、運転席から手の届く位置に常備しておくことが必要です。

脱出用ハンマーでガラスを割るコツは、ガラスと垂直になるように、ハンマーを当てること(PHOTO:Adobe Stock_andrewbalcombe)
脱出用ハンマーはシートベルトカッターが付属しているものを選び、運転席から手が届く場所に保管をしよう(PHOTO:Adobe Stock_Андрей Репетий)

タイヤが空転してしまったときは、トラクションコントロールをオフに!!

 クルマでキャンプなどに出かけてぬかるみにはまってしまった場合や、雪道でタイヤがスタックしてしまった場合など、タイヤが空転してしまい前進できなくなってしまったとき。JAFによると、アクセルペダルをゆっくり踏み込んで小刻みに前進と後退を繰り返し、振り子のようにクルマを動かすと脱出できる可能性があるそう。ただ、それでも脱出が難しい場合に試してほしいのが、トラクションコントロール制御をオフにする方法です。

 トラクションコントロールは、急加速によるタイヤ空転を防ぐため、エンジン回転を押させる制御のこと。その機能をオフにすることで、低速で駆動輪が回転しやすくなるのです。昨今のクルマだと、姿勢制御システムの一部に組み込まれており、VDCオフスイッチ(日産)やVSCオフスイッチ(トヨタ)、VSAオフスイッチ(ホンダ)など、メーカーによって名称が若干異なりますが、機能はほぼ一緒。あえてタイヤを空転させて、一気に脱出するのです。ほかにも、スノーモードや2速発進などに切替えることで脱出できる場合もあります。

 どんな場合でも脱出できるわけではないですが、制御をカットすることで、自力で脱出できる場合もあるため、JAFへ救援要請する前に、一度試してみる価値はあります。

ぬかるみなどでタイヤが空転して前進できなくなってしまったとき、このシステムをオフにすることで、脱出できる可能性が。近年は液晶メーターのメニューに入っている車種も

子供には、クルマに閉じ込められたら「お尻でクラクションを鳴らせ!!」

 また、これからの季節で心配なのが、小さなお子さんがクルマに閉じ込められてしまう事故。JAFによると、気温35度の炎天下に駐車した車内は、エンジン停止後、わずか15分で危険なレベルに達してしまうそう。

 一刻を争う状況で、お子さんが自らSOSを発するため、警視庁のX公式アカウントが推奨しているのが、「お尻でクラクションを鳴らす」方法。ハンドルにお尻を向けた状態でハンドルを両手で持ち、尻もちをつく要領でハンドル中央を押すことで、力が弱いお子さんでも簡単にクラクションを鳴らすことができる、としています。また、夏場に持っていることが多い、水筒を使って押す方法も。もちろん、お子さんが自分でドアを開けることができるならば、そのほうが早いですが、ドアが開かなかった場合として、こうした対処法を知っておいてもらうというは、大切なことかもしれません。

夏場の車内への置き去りは、わずか十数分で命の危険にさらされることも。絶対に置き去りにしてはいけないのは大前提として、万が一の際のSOSの発信の仕方を知っておいてもらうことも大切(PHOTO:Adobe Stock_Qiteng T)

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 雨が多くなるこれからの季節は、クルマで移動中に突然豪雨に遭遇することもあるでしょう。うっかり冠水したアンダーパスに入ってしまったり、道路が冠水したことで流されて河川に入ってしまうということも考えられ、そうしたときに、対処法を知っているかいないかは生死をわけることにもなりかねません。

 また、近年のクルマには、「緊急ボタン」が装備されていることが多くなっています。「SOSコール」とか「ヘルプネット」とよばれる装備ですが、緊急時にこのボタンを押すだけで、通信センターとつながり、オペレーターが警察や消防への連絡、緊急車両の手配をサポートしてくれます。接続と同時にクルマの位置情報も共有されるので、命に関わる事態が発生した際には、大変便利な機能。押すだけでつながってしまうため、予行練習は難しいですが、万が一のときのため、知っておきたい装備です。

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