マツダの現行車種の名前は、記号のように統一されているのは良いのだが、登録乗用車で「車名」といえるのはロードスターくらいで、少し寂しい。時代を遡ると、マツダのクルマって結構いい名前が多かったのに……。そこで、ネーミングセンスが光っていた、マツダのクルマを見ていこう!

文:佐々木 亘/写真:MAZDA

■マツダの歴史を支えてきた名車は名前もすごい

後世に遺したいマツダの車名といえば、やはり「ファミリア」だろう。1980年登場の5代目マツダ ファミリアは登場からの5年間で77万台以上を売り上げた

 マツダと言えば、このクルマなしに語ることはできない。現在も商用バンの名前としては残っているが、この名前は登録乗用車として残すべきだと思う。

 お気づきの方も多いだろう。まずは「ファミリア」から紹介していく。

 現在のマツダを作り上げた、黎明期からの屋台骨がファミリアだ。初代は1963年に登場。以降、マツダ小型車のスタンダードを走り続けてきた。中でも5代目は、登場からの5年間で77万台以上を販売する大ヒットとなる。

 ファミリアはスペイン語で「家族」の意味。マツダが思うクルマの使い方が、色濃く反映された名前であろう。家族そろってドライブに行くためのクルマ、それがファミリアである。

 さらにもう一台、マツダを70年代から支えるのがカペラだ。欧州市場も意識し、少し日本車とは離れた雰囲気をもっていて、それがまたカッコいい。

 カペラは、マツダ不遇の時代とも言える1990年代後半から2000年頃までの間、マツダブランドをしっかりと守り抜いた功労者だ。スターになるようにという願いから、ぎょしゃ座のα星の名前である「カペラ」と名付けられている。

 ファミリアもカペラも、名前通りに育った良いクルマだ。昭和のマツダは、キャッチーで耳馴染みのいい名前を、多く付けていた印象がある。

■マツダのひたむきさを表した2000年代の名車

マツダのミニバン代表といえば「プレマシー」。英語のSupremacyが車名の由来

 現在の日本市場には存在しないのが、マツダのミニバン。ただ、少しだけ時間を巻き戻すと、個性的なミニバンが数多く存在していた。

 そのマツダミニバン代表戦士とも言えるのが、プレマシー。車名の由来は、英語のSupremacyから。SUの部分を取り除くとPremacy(プレマシー)になる。単語の意味は、至上・至高性だ。

 ミニバンの頂へ到達したいという、マツダの思いが詰まっている名前だ。OEM提供も盛んで、初代はフォード・イクシオン、3代目は日産へ提供されラフェスタとして販売された。現在も作り続けていたら、本当にミニバンの頂点に君臨していたかもしれない。

 また、2000年代のマツダコンパクトモデルを支えてきたのが、ベリーサだ。車名は、イタリア語の「Verita(真実)」と、英語のSatisfaction(満足)を合わせた造語である。小さいクルマだが、その中は真の充足感で満たされているという意味だろう。

 ベリーサは、デミオ以上ファミリア未満の絶妙なサイズ感で、プレミアム・コンパクトを強く意識したクルマである。現在まで続く、マツダの上質路線は、ベリーサから始まったと言っても過言ではない。

2000年代のマツダコンパクトモデルを支えてきた「ベリーサ」

 常に世代の頂点、カテゴリーの頂点、そしてユーザー満足の頂点を目指したクルマづくりを反映した、思いの詰まった名前が目立つのが2000年代のマツダだ。

 当時のマツダは、愛されるクルマを作るべく、名前にも血が通っていた。車名からは、開発チームのクルマにかける思いが、ひしひしと伝わってくる。

 マツダの車名は、どこかオシャレでいてユーザーとの距離が近い。だからこそ、印象深く残り、一度聞くと忘れられなくなる。

 こんなにも良い名前ばかり付けられるのだから、クルマには現在の記号的な車名よりも、意味を持つオシャレな名前を付けてほしいものだ。

 良いクルマは、良い名前から生まれる。意味のある車名にすることで、マツダ車はさらに輝きを増すのではないだろうか。

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