個性的なコンパクトクロスオーバーSUVとして人気だった日産「ジューク」。残念ながら、日本では2019年の初代モデル生産終了とともに姿を消してしまった。実質的な後継車として、2020年にタイ生産の「キックス」が導入されたが、欧州専売となった2代目ジュークはキックスよりも洗練されたスポーティな雰囲気で、日本導入とならなかったのが残念でならない一台だ。

 そんなジュークだが、すでに3代目登場のウワサがきこえてきている。ではもし、3代目となる次期型ジュークが日本市場に復活するとしたら、どんなクルマになるのか、期待を込めて予想してみよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:NISSAN

衝撃が走った、初代ジュークアンベールの瞬間

 2010年6月に日産のグローバル本社で開催された、初代ジュークの発表会。日産はジュークのコンセプトについて「SUVとコンパクトスポーツカーの特徴、つまりSUVの力強さとコンパクトスポーツカーの俊敏さを「融合」ではなく「結合」させた」と説明していた。

 アンベールとなったこの新型コンパクトSUVをみて、当時多くの人が「えっ」と思っただろう。フロントフェンダーの上まで伸びるポジションライトや独立した丸型のヘッドライト、筋肉質で立体的なフォルムなど、先進的ながら、コンセプトカーがそのまま飛び出してきたかのようなかなり攻めたデザイン。「カッコイイ」とも「カワイイ」とも「ブサイク」とも違う、なんか気になってしまうデザインのクルマを、よく世に送り出してくれたものだと思う。

 このクセの強いデザインは国内外問わず酷評されることもあり、当の日産社内でも心配する声があったようだが、ふたを開けてみれば発売後約1ヶ月で月販目標の8倍を超える受注があるほど、好調なスタートだった。

 特徴はデザインだけでなかった。当初は1.5Lガソリンエンジン(HR15DE)のみであったが、半年後には1.6L直噴ターボ(MR16DDT)を搭載した「16GT」と、その4WD版である「16GT FOUR」を追加。190ps/24.5kgmを発生するターボエンジンはトルクがあり、適度にスポーティな足回りのおかげで、ジュークのコンパクトなボディを悠々と走らせることができた。

 ちなみに「16GT FOUR」の4WDシステムは、先代エクストレイルのオールモード4×4-iの進化版だ。トルクベクトルという当時の最新システムによって、従来の前後トルク配分に加え、後輪左右のトルクをもコントールし、コーナーを思い通りに曲がることができた。

2010年登場の初代ジューク。個性的なデザインが賛否両論であったが、受注は好評だった
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2代目はモダンで洗練されたデザインに

 2代目でジュークは、初代譲りの丸型ライトなど、ジュークらしさは残しつつ、ボディサイドのキャラクターデザインや大きなVモーショングリル、シャープなテールランプなど、かなり洗練されたデザインに生まれ変わった。新ジャンルを築いたジュークの魅力を基本に、より現代的で洗練されたテイストが反映されているという感じだ。

 インテリアもリアビューもアクが強いとはいえないものの、パーソナルカーとしての主張・素養は十分備えていると感じる。初代登場時のようなインパクトはないが、どのSUVにも似ていないデザインは魅力で、普通にカッコいいと思う。

 ボディサイズは、全長 4,210 mm、全幅1,800 mm、全高1,595 mm、ホイールベース2,636 mmと、キックスよりも幅広くて短い。日本人が考える「コンパクトSUV」としてはキックスのほうが適しているかもしれないが、クセの強い変化球で攻めた2代目ジュークのほうを、魅力的に思う(日本)人も少なくないと思う。

2019年に発表された2代目ジューク。ジュークらしさを残しつつ、都会的で洗練されたデザインに生まれ変わった
最新のジュークはフル液晶パネルのメーター、大型ディスプレイなど、デジタル世代にふさわしい近代的な仕様だ

3代目も奇抜さにこだわってくるに違いない

 そんなジュークだが、3代目となる次期型ではバッテリーEVとなるようだ。日産が2023年11月にイギリスで行った欧州市場における電動化戦略の説明の場において、ジュークにバッテリーEVモデルを設定し、市場投入する旨を発表したのだ。

 デザインについては、2023年秋に開催されたジャパンモビリティショー2023に登場した「ハイパーパンク」のイメージが取り入れられるとのこと。ハイパーパンクは、巨大な23インチタイヤを装着している一方で、キャビン部分はコンパクトと、どことなくアンバランス。まるで、初代ジュークが初登場したときの「違和感」に近い感覚だ。

 日産はハイパーパンクの特徴を、「常識にとらわれない、前衛的なデザイン」としており、ジュークは3代目でも、「奇抜さ」にこだわってくるようだ。ひょっとすると、ハイパーパンクのように、ヘッドライトレス(見えないように隠す)にしたり、ドアが観音開きタイプになる(ハイパーパンクはシザーズドア)などもあるかもしれない。少なくとも、ハイパーパンクの三角形を用いたデザインテイストは折り込まれてくるのではないだろうか。バッテリーEVだけでなく、日本仕向けには、ぜひe-POWERも用意してほしいところだ。

ジャパンモビリティショー2023に出展された「ニッサン ハイパーパンク」。日産は次期ジュークは、このハイパーパンクにインスパイアされたモデルになることを示唆している

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 初代ジュークがそうであったように、2代目もレッドやイエローなどの目を引くカラーリングがよく似合う。限定モデルや限定カラーなど、定期的に特別仕様車をリリースするなど、ジュークのキャラクターは話題づくりにも事欠かない。

 日産は、欧州での販売が好調で、円安も手伝って純利益が増加したようす。これらで得たリソースは、電動化シフトを中心に使われていくのであろうが、ぜひ日産には、ユーザーのカーライフが楽しくなるような仕組みづくりにも、取り組んでほしいと思う。遊び心が満載の3代目ジュークの日本登場を心待ちにしている。

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