最近は運転士不足や輸送力増強のために、1台のバスで換言すれば1人の運転士でどれだけ多くの乗客を運ぶのかが重要になってきている。都市部で連節バスが多くなってきているのはその一例だ。このような連節バスの免許はどうなっているのだろうか。

文:古川智規(バスマガジン編集部) 写真:東出真
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■2台出す余裕はない

三重交通のエルガデュオ

 バス運転士の不足や2024年問題で、バスはあるが走らせる人がいないという状況が悪化してきている。都市部では仕方がなく減便はしても乗客の数あ極端に減るわけではないので、何とか輸送力は確保しなければならない。

 以前ならば同じダイヤのバスを増やす続行便で対応したり、正規のダイヤで数分おきに同じ経路のバスを出したり、臨時で対応したりと、とにかく数には数で勝負してきた。しかしこれは当たり前の話だろう。

 鉄道でも両数を増やしたり、臨時列車を出したりしてラッシュ等の多客時をしのぐ。しかしバス事業者にはその2台目を出せる出す余裕がないのだ。お金ではなく人の問題である。

■1台で2台分?

メルセデスベンツ・シターロG

 限られた運転士の数でダイヤを組むと減便になってしまう。しかし乗客が著しく減るわけではないので、輸送力は確保しなければならない。そこで登場したのが連節バスだ。

 1台で2台分とまではいかないまでも、2台分に近い輸送力を運転士1人で確保できるのは魅力だ。それゆえに制限も多く、あの長さから幹線道路しか走れず、ターミナルも相応の長さや転回半径が必要だ。これらをクリアした幹線路線にエルガデュオやシターロG等の連節バスが就役する。

■連節と連接?

日本の連節車は後輪駆動が主流なので押している感じ?

 読みは同じなのでどちらでもいいと思われがちな連節と連接は大きく異なる。バスの場合は連節だ。連節バスの要件は国が細かく定めているが、難しいことは抜きにしてワンマンで運転できて、車体が2つつながっていて、乗客が前後を自由に行き来できる構造で、前と後ろの車両を鉄道車両のように容易に切り離せない構造のバスということになろうか。

 実際にはもっと細かい規定はあるが、概ねこんなところだ。日本ではメルセデスベンツのシターロGが輸入されて、遅れることいすゞエルガデュオが国産の連節バスとして販売されている。

■動きはトレーラーだけど?

エルガデュオは国産なので前後車両ともに非常口が備わる

 連節バスの動き方は曲がるときに連節部が折れ曲がることからフルトレーラーに似ている。トレーラーはフルトレーラであろうがセミトレーラーであろうが、引かれる方が750kgを超えれば引く法の運転免許とけん引免許が必要だ。引く方は普通自動車から大型自動車、大型特殊自動車でもよい。

 連接バスの場合はバスは当然大型自動車だが、引かれる方も(実際には押している方式なので表現としては適当ではないが)バスなので大型っぽい。しかもお客さんを乗せるのだから、大型二種とけん引二種の両方が必要なように見える。

■けん引免許は不要だけど?

 しかし実際には大型二種免許だけで連節バスは運転できる。これは連節だからこその理由なのだ。つまり容易に切り離せない構造から、トレーラーをとっかえひっかえするように、バスをダイヤによって付け替えたりはしない。よって一体のものとみなされてけん引免許は不要なのだ。

 ただし、そうはいっても挙動がトレーラーなので、事業者によっては連節車を運転する運転士にはけん引免許を取得させるようだ。いずれにせよ日本で走る現行の連節バスは大型免許だけでOKだ。

 大量輸送には香港のような二階建てバスという手もあるが、乗降に時間がかかるため路線バスとしての運用は日本では行われていない。ますます増えると思われる連節バスに乗車機会があれば構造にも関心を持ってみてはいかがだろうか。

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