「中身で勝負」なんて言葉をよく耳にするが、結局は「見た目で勝負」のことが多い。クルマも例外ではなく、特に第一印象に影大きな響を与えるフロントマスクは重要だ。そこで、今回は斬新な顔やユニークな顔など、個性派マスクのクルマたちを紹介しよう

文::木内一行/写真:トヨタ、ダイハツ、日産、ホンダ

■ほっこりしてしまう優しげな目元に注目【ホンダN-WGN】

フロントからリアまでハリのある滑らかな面で構成されたエクステリア。パキッとした折り目がどこにもなく、繊細なふくらみでしっかり感を表現しているという。四隅に配置されたタイヤや張り出したフェンダーが、安定感や躍動感を演出している

 それぞれのキャラクターが明確にされていて、デザインも際立っているホンダのNシリーズ。そんななかで、最もユニークな顔つきなのはN-WGNだろう。

 N-ONEの「びっくりした目」が強烈であまり特徴があるように見えないかもしれないが、N-WGNは丸型ヘッドライトの上に配置されているウインカーがキモ。サイズ感といい、微妙な被り具合といい、まぶたにしか見えないのだ。

 クルマのフロントマスクを人間の顔に例えることは珍しいことではないが、目(ライト)だけあってまぶたやまゆ毛がないのは不自然。それだけに、まぶたがあるN-WGNのマスクは、より人間っぽいのである。

 ちなみに、メーカーとしては親しみやすさと安心感を表現した顔つきをイメージしたそうだ。

 また、ほかのNシリーズ同様にエアロパーツを装着したカスタムグレードも設定。こちらは角形ヘッドライトの採用により、人間的というよりはロボット的な感じだ。

 これは余談だが、ダイハツの6代目ハイゼットもライトの上にウインカーが配置されており、その姿から「まゆ毛」と呼ばれている。

■サングラスをかけたブルドッグって!? 【日産キューブ(3代目)】

3代目キューブ

 初代、2代目と独創的なデザインとコンセプトで話題をさらったキューブ。2008年にフルモデルチェンジした3代目も、我々の予想の斜め上をいく斬新なルックスで注目を集めた。

 もちろん、見どころはスタイリングなのだが、そのなかでも特徴的なのがフロントマスク。

 イメージしたのは「サングラスをかけたブルドッグ」とのこと。実際にサングラスをかけたブルドッグを見たことがないため評価は難しいが、いわゆるブサカワ系。若年層や女性に好まれそうな表情だ。

 また、キビキビとした走りや安定感を感じさせるスタンスも、ブルドッグが踏ん張った雰囲気をイメージしたという。そして、乗る人がフォトフレームに収まっているかのように見せるサークル型のサイドウィンドウも特徴的だ。

 その一方、左右非対称のバックドアや横一文字のリアコンビランプなど、キューブらしさを継承している。

 ブルドッグフェイスだけでなく、そこかしこにユニークなモチーフが取り入れられているのが3代目キューブなのである。

■どっちが前だかわからない前後対称デザイン【ダイハツコペン(初代)】

ダイハツ初代コペン

 誰でも気軽に楽しめる本格的なオープンスポーツとして、2002年にデビューしたコペン。スポーツカーゆえ、直4ターボエンジンや専用サスペンションといったメカニズムに注目が集まるが、唯一無二のカッコかわいいルックスが大きなポイントとなっている。

 FFレイアウトを活かしたキャビンフォワードのティアドロップシェイプシルエットは、低重心で力強い走りをイメージさせる。しかし、それ以上に特徴的なのが前後のデザイン。

 レンズの色など細かい違いはあるものの、ヘッドライトやフォグランプ、グリルの枠の形状などがリアにそのまま受け継がれている。つまり、前後のデザインがほぼ対象になっているということ。紛らわしいとまでは言わないが、実に珍しいケースだ。

 もちろん、軽自動車で初めて油圧機構を採用した電動開閉式ルーフの「アクティブトップ」もコペンの魅力のひとつ。走りを優先するユーザー向けに、樹脂製で軽量な着脱式のディタッチャブルトップも用意されている。

 特徴的なマスクとはちょっと違うが、こんな斬新な手法もあるという好例だ。

■超個性的な縦型4連ライトは近未来感満点【トヨタWiLLサイファ】

今までにない未来的なデザインは、「サイバーカプセル」をモチーフにしたもの。ヘッドライトやウインカーなどを縦に並べた4連ランプが、先進的で独創的なフロントマスクを演出している。ダイナミックな造形のフェンダーも特徴的

 トヨタを含む5社が、新たなマーケティング手法を共同で開発するために発足した「WiLL」。その異業種合同プロジェクトのクルマシリーズ第3弾として登場したのがWiLLサイファだ。

 サイファは業種の垣根を超えた新しい取り組みにふさわしく、とにかく個性的。

 それを象徴しているのがエクステリアで、4つのランプをフェンダーアーチに沿って縦一列に並べたフロントマスクは斬新かつ近未来的なイメージが強い。それでいて、どことなく親しみを感じさせるのだから不思議。プロジェクター式ライトを採用したからこそ可能になったデザインだといえよう。

 全体としては「サイバーカプセル」をテーマに、斬新かつ都会的で親しみのわくスタイリングを追求したという。

 そして、情報ネットワークサービス「G-BOOK」の車載端末を初めて標準装備したことが大きな特徴。これにより携帯電話などを接続せずに最新のエリア情報を入手したり、eメールの送受信が可能になったりした。

 ちなみにWiLLシリーズは、Vi(ヴイアイ)、VS(ブイエス)と続き、このサイファで完結した。

■見た目と車名が完全に一致する珍車【日産エスカルゴ】

日産エスカルゴ

 名は体を表すというが、日産のエスカルゴはまさにソレ。ボンネットからひょっこり突き出た丸いヘッドライトを見れば一目瞭然、完全にカタツムリの顔だ。さらに、なだらかな弧を描くサイドビューだって、カタツムリのシルエットそのままである。

 そんな、クルマ全体でカタツムリを表現したエスカルゴは、1987年の東京モーターショーで参考出品され、1989年1月に市販車としてデビュー。

 商用車が持つ地味なイメージを払拭するために、ひと目見ただけで印象に残るファッショナブルでユニークなエクステリアデザインを実現。愛嬌満点のフロントマスクは、「街を行く人々の視線を集め、人気者となるクルマ」を目指したものだ。

 また、キャンバストップなんて女子が喜びそうな仕様を設定していたことも、これまでの商用車とは大きく異なる部分である。

 ちなみに車名のエスカルゴ(S-Cargo)は、カタツムリのエスカルゴ(Escargot)と、貨物のカーゴ(Cargo)を組み合わせた造語。

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