5月28日、内燃機関の逆襲とでもいうべき衝撃会見を行ったトヨタ、スバル、マツダ。ただし忘れてはならないのは、3社の計画にはいずれもCN(カーボンニュートラル)燃料が不可欠だということ。いまいちよく分からんCN燃料って、いったいなんなのだろう?

文:ベストカーWeb編集部/写真:トヨタ、ベストカーWeb編集部

■合成燃料とバイオ燃料の2つに大別できる

5月28日に行われた「マルチパスウェイワークショップ」

 そもそもカーボンニュートラル(炭素中立)とは、工業製品などを作る際、原材料~製造~廃棄というライフライクル全体を通じて、CO2を増やさないことを指す。

「増やさない」というのは「出さない」とは微妙に違う。たとえば使用過程でCO2が出るとしても、成長過程でCO2を吸収している植物などを原材料とすれば、トータルのCO2排出はプラスマイナスゼロで「合格」となるわけだ。

 CN燃料とはまさにそんな燃料のことなのだが、さまざまな研究が進んだ現在では、ざっくり2つに分けられる。一つがe-Fuel(イーフューエル)とも呼ばれる合成燃料。もう一つがバイオ燃料だ。

 まず合成燃料は、二酸化炭素と水素を原材料とする石油の代替燃料だ。2つを合わせると炭化水素の化合物ができるのだが、実はこれ、石油と基本組成が同じで燃やすことができるのだ。

 どうやって作るかというと、二酸化炭素はあちこちから放出される「悪役」だからこいつを回収する。水素は化石燃料からも作れるが、それでは元の木阿弥なので(また二酸化炭素が出る)、水を電気分解して作る。太陽光や風力で作った電気を使ってクリーンな水素を得るわけだ。

 2番目のバイオ燃料だが、こっちは主に農作物からできる。現在はトウモロコシやサトウキビが主体だが、食料用や飼料向け用途を圧迫するため、新たな原材料探しが進んでいる。

 たとえば家庭や料理店から出る使用済み食用油を回収して精製しようという動きもあるし、ユーグレナという会社はミドリムシからジェット燃料やディーゼルを作り、ディーゼルはマツダのスーパー耐久マシン用にも使われている。

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■リッター700円という価格をいかに下げるか

CN燃料は合成燃料とバイオ燃料に大別できる

 冒頭でも触れたが、合成燃料もバイオ燃料も燃やせばCO2が出る。しかし合成燃料の場合は放出されたCO2の再利用だし、バイオ燃料も原材料の植物が大気から吸収したCO2だから、トータルではCO2が増えない点が素晴らしい。

 そんな素晴らしいCN燃料なのだが、目下の課題はコストだ。種類によって異なるが、現在その価格はリッターあたり700円にもなるとされ、とてもじゃないが普通に流通させられるものじゃない。そこで国と民間が協力して、2030年にリッター200円のCN燃料を作ろうという動きが進んでいる。

 実は、トヨタ、スバル、マツダの3社が会見を行った前日の5月27日に、トヨタは出光興産、ENEOS、三菱重工と共同で、CN燃料普及に向けた検討を開始するという発表を行っている。まさにこの4社が狙うのも、CN燃料の効率的な生産と普及に違いない。

 CN燃料が普及すれば、BEVに慌てて乗り換える必要がなくなるし、当面は内燃機関に頼らざるを得ない途上国、新興国の人たちにも、脱炭素の道が開ける。内燃機関の未来は、まさにCN燃料にかかっていると思っていいだろう。

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